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盛岡家庭裁判所 昭和48年(家イ)37号 審判

申立人 久保清治(仮名)

相手方 玉井茂子(仮名)

主文

申立人と相手方は母(亡久保直江)を同じくする兄妹関係でないことを確認する。

理由

申立人は、主文同旨の審判を求め、その理由とするところは、「申立人と相手方とは、戸籍上父久保浪蔵(昭和七年三月一一日死亡。)母久保直江(昭和一三年四月一八日死亡。)夫婦の間に、申立人は二男、相手方は四女として出生した父母を同じくする兄妹と記載されているが、事実はいわゆる腹違いの兄妹である。即ち、浪蔵と直江は明治二六年一〇月三一日に婚姻して申立人の肩書本籍地で同居生活を営み、その間に二男三女を儲けたが、明治三五年に直江が申立人を分娩したころ、父浪蔵は妻子を残して単身旧日本領樺太に出奔し、それ以来全く音信なく消息を絶ち、結局妻子の許に帰戻することなく、昭和七年三月一一日同地で死亡した。そして申立人が物心ついたころ、前記本籍地の住居には申立人と母直江それに二人の姉(三女ミヨは生れた翌日死亡。)と長兄の五人家族で生活しており、その後母は分娩したことはなく、また、転居や再婚したという事実もない。しかして、その後父は樺太で他女(氏名不詳)と同棲して内縁関係を継続し、その間に一人の女児があるということの風評を聞いたことはあつたが、所在も不明のまま推移して来たので確めるすべもなく、また申立人は、相手方と起居を共にしたこともない。最近必要あつて戸籍謄本の交付をうけたところ、前記の如き戸籍記載があつたので、風評で知つたことが事実であると判明した。それで父浪蔵は、妻の直江とは長いこと別居し、いわゆる外縁関係にあつたこともあつて、無断で相手方を妻直江との間に四女として出生したごとく虚偽の出生届をしたものと思料される。それで最近相手方の所在が判明したのを機に、申立人と相手方との身分関係を真実に合致させたいと思い、本件申立をした。」というのである。

そこで当裁判所は、昭和四八年二月九日午後二時調停委員会を開いて調停を試みたところ、相手方は申立人が主張する原因事実について争わず、申立どおりの審判をされることに異議がないと述べた。

よつて判断するに、本件記録添付の戸籍謄本ならびに当事者各本人審問の結果を総合すると、申立人の主張事実がすべて認定され、本件調停委員会に現われた諸般の事情を参酌し、かつ、調停委員小野昌次、同舘下チヨの意見を聴いたうえ、当事者間に成立した合意を相当として認容し、家事審判法第二三条第二項によつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 木原幹郎)

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